「社員が主役」のInstagram運用とは、社員やスタッフが顔や名前を出し、自分の言葉で商品や仕事を紹介する運用です。働く人の目線で使い方や現場の知識を伝えられるので、親しみを持たれやすく、ファンが育ちやすいのが強みです。一方で、販売に関わる社員が自社の商品を紹介する投稿は、景品表示法の「事業者の表示」にあたることがあり、広告であることを分かるように示す必要があります。
この記事は2026年10月時点の情報です。
悩む子うちも社員に出てもらおうと思っているんですが、気をつけることはありますか?
ハビット始める前に「広告の表示」「担当が替わるときの引き継ぎ」「顔や名前を出す同意」の3つを決めておこう!
この記事はこんな人にオススメ
- 企業アカウントに社員を登場させたい、または社員名のアカウントを始めたい担当者
- 社員が自社商品を紹介するときの、広告の表示のルールを知りたい方
- 担当者の異動や退職に備えて、運用の決まりを整えたい方
この記事で分かること
- 社員が主役の運用の意味と、実際のアカウントの見せ方
- 社員が出る運用の3つのメリット
- 始めるまでの5つの手順
- 社員が自社商品を紹介するときの広告の表示(ステマ規制)
- 担当者の退職・異動のときに引き継ぐものと、顔や名前を出すときの取り決め
“社員が主役”のInstagram運用とは?

“社員が主役”のInstagram運用とは、企業のロゴを前に出すのではなく、社員やスタッフが前に立って発信する運用です。形は2つあります。企業の公式アカウントに社員が毎回登場する形と、会社の業務として社員の名前のアカウントを運用する形です。
社員の名前のアカウントでは、名前の欄に「ブランド名+店舗名+名前」を入れ、自己紹介文に自分の立場と発信の中身を書くと、誰が何を発信しているかが最初に伝わります。
同じ商品の紹介でも、社員が「自分はこう使っている」と伝えると、サイズ感や使う場面が具体的に伝わります。ただし、これは広告であることを隠してよいという意味ではありません。社員が自社の商品を紹介するときの表示のルールは、後の「注意点」で説明します。
「社員が主役」のアカウントのメリット

社員を前に出すと、企業の公式の発信だけでは伝えにくい現場の知識や人柄を届けられます。主なメリットは次の3つです。
メリット1: 信頼性の高い情報を発信できる
社員は、毎日お客様と接し、商品を扱っています。その立場だからこそ出せる情報が、投稿の中身になります。
- 店頭でよく聞かれる質問への答え。例:「このコートは、普段Mサイズの方ならどちらを選ぶ?」
- 自分で使ってみて分かった使い方や手入れのしかた
- 商品ができるまでの工程や、選んだ素材の理由
カタログに書いていない、使う人の目線の情報は、買う前に迷っている人の判断材料になります。キャプションの1行目は、たとえば「店頭でいちばん聞かれる『このコート、どのサイズを選べばいい?』に、スタッフの目線で答えます」のように、誰が何に答える投稿かを書きます。
メリット2: ファンがつきやすい
商品の紹介だけでなく、仕事の様子や人柄が伝わると、「この人の紹介なら見てみたい」と思われ、ファンがつきやすくなります。
引用元:https://www.instagram.com/3coins_junko/reels/
上は、3COINSの本部スタッフのアカウント(2026年10月時点でフォロワー約49.7万人)のリールです。自己紹介文の1行目に「3COINS本部スタッフ・SNS担当」と所属と役割を書き、毎週月曜と金曜にインスタライブで商品を紹介すると案内しています。このリールでは、30周年の1年の振り返りと31年目のあいさつを、本人の言葉で伝えています。決まった曜日に同じ人が出てくるので、見る人が「次も見よう」と思える形になっています。
フォロワーをファンに変える具体的な打ち手は、次の記事で解説しています。
メリット3: 商品の良さを、使う人の言葉で伝えられる

企業の公式の発信では、商品の特長を並べた説明になりがちです。社員が出ると、「なぜこの商品を作ったのか」「自分はどんな場面で使っているか」を、体験として話せます。
引用元:https://www.instagram.com/chiro_beautypartner_shiseido/
上は、資生堂ジャパンの美容部員のアカウント(2026年10月時点でフォロワー約11.5万人)の投稿です。時短に使えるアイテムを、価格つきで一覧にしています。名前の欄には「CHIRO@資生堂ジャパン|37歳|時短・簡単メイク」と、会社名と発信のテーマを入れています。見る人は、資生堂ジャパンの人が発信していると分かったうえで、メイクの方法を見られます。
社員の言葉で伝えることは、宣伝であることを隠すこととは違います。会社名と役割を出し、必要な場合は広告であることを示したうえで、使う人の目線で話すのが、社員が出る運用の正しい形です。
社員が主役のアカウントの始め方
社員が主役のアカウントは、次の5つの手順で始めます。投稿を出す前に、1〜4を決めておきます。
- 目的と、出る社員・役割を決める。例:「店舗スタッフがコーディネートを紹介し、来店につなげる」
- 出る社員本人と、出演について書面で取り決める(決める内容は後の注意点で説明)
- 名前の欄と自己紹介文に、会社名と役割を書く。例:「〇〇(ブランド名)青山店スタッフ」「〇〇本部・SNS担当」
- 投稿のガイドライン(広告の表示・避ける話題・投稿前の確認)をつくる
- ログイン情報を会社で管理し、返信の担当を2人以上にしてから投稿を始める
それぞれの決め方は、次の「注意点」で説明します。社員が出るかどうかに関係なく、アカウントの目的やKPIの決め方から順に確かめたい方は、次の運用ガイドが参考になります。
社員がSNSを運用する際の注意点
社員が出る運用で決めておくルールは、広告の表示、引き継ぎ、顔や名前を出す取り決め、そして担当者を守る仕組みです。
炎上や誤情報を防ぐためのルール作り
最初に決めるのは、広告の表示のルールです。2023年10月1日から、広告であることを隠した表示(ステルスマーケティング)は景品表示法で規制されています。消費者庁の「ステルスマーケティングに関するQ&A」では、社員の投稿について次のように説明しています。
- 社員が自社の商品の感想を投稿しただけで、ただちに「事業者の表示」にあたるわけではない(Q3)
- ただし、販売や開発に関わる役員、管理職、担当チームの一員などが、商品の認知を広げるために投稿する場合は「事業者の表示」になりうる。その場合は「広告」などと分かりやすく書かないと、告示に違反する(Q3)
- 「私は〇〇社の社員です」と所属を書くだけでは、事業者の表示だと明瞭になっているとは必ずしもいえない(Q12)。分かりやすい例は「広告」「宣伝」「プロモーション」「PR」の表示
- 本文ではなく、返信の欄に書くだけでは、明瞭とはいえない場合が多い(Q14)
会社の業務として社員が出るアカウントは、名前の欄か自己紹介文に会社名と役割を書き、自社の商品を紹介する投稿では、本文に広告であることを示します。社内ルールの例:「自社の商品を紹介する投稿は、キャプションの冒頭に『#PR』と書く。コメント欄だけに書くことはしない」。
広告の表示に加えて、ガイドラインには次の項目を入れます。
| 決めること | 内容の例 |
|---|---|
| 広告の表示 | 自社の商品を紹介する投稿は、キャプションの冒頭に「#PR」。迷ったら担当の上司に確認する |
| 名前の欄と自己紹介 | 会社名と役割を書く(例:〇〇本部・SNS担当) |
| 発信してよい話題・避ける話題 | 社外秘の情報、お客様の写り込み、政治や宗教などの話題は避ける |
| 作成と承認の分担 | 作るのは出演する社員、公開前の確認は別の担当者 |
| 困ったときの連絡の順番 | 批判のコメントが続いたら、担当者→上司→広報の順に連絡する |
| 研修 | 始める前と、その後も定期的に、ガイドラインを読み合わせる |
公開前には、誤字、誰かを傷つける表現、誤解を招く画像やハッシュタグ、承認の有無、広告の表示、効果の言い切りの6つを確かめます。コムニコ社も、ガイドラインに連絡の順番や作成と承認の分担、研修を入れることをすすめています。
累計500件以上のアカウント運用に関わってきた株式会社ハッシュタグでは、社員が出る企業アカウントには、ガイドラインの最初のページに広告の表示の決まりを置くことをすすめています。いちばん判断に迷いやすく、違反したときの影響が大きい項目だからです。炎上したときの最初の対応は、次の記事で解説しています。
属人化しないように運用をマニュアル化する

社員の発信が人気を集めていても、運用が1人に頼りきりだと、その社員の異動や退職でアカウントが止まります。投稿の頻度や時間帯、写真の雰囲気、返信の口調などをマニュアルにし、担当が替わっても同じ形で続けられるようにします。
担当者が替わるときに引き継ぐものは、次のとおりです。TaTap社の解説と、富山県警察の資料の内容が一致しています。
- ログイン情報(ID・パスワード・2段階認証に使う端末)は、個人ではなく会社で管理する
- 引き継いだら、パスワードを新しく設定し直す
- 前の担当者の個人の端末から、アカウントをログアウトする(誤投稿や、DMに残ったお客様の個人情報が見られる状態を防ぐ)
- 運用マニュアル、トーン&マナー、写真や動画の素材、外部ツールの権限を回収する
顔や名前を出す社員と、出演の範囲を書面で決める
社員の顔や名前を出す場合は、辞めたあとの扱いを先に決めておきます。弁護士ドットコムニュース(2024年7月)では、退職した社員が肖像権を理由に動画の削除を求めることがありうる、と弁護士が解説しています。日本の人事部のQ&Aでも、退職後に写真などを使うには原則として本人の同意が要る、と社会保険労務士が回答しています。
具体的には、出演の前に次の3つを本人と書面で決めます。
- 出演の範囲(顔を出すか、名前は本名か愛称か、どの投稿に出るか)
- 期間(在籍中のみか、退職後も残すか)
- 退職や異動のあとの扱い(過去の投稿を削除するか、残すか、アカウントをどうするか)
書面の内容が法的にどこまで有効かは、会社の状況で変わります。個別の判断が必要なときは、弁護士や社会保険労務士に確認してください。
即効性を期待しすぎない

社員が出るアカウントが育つまでの期間に、公式の目安はありません。広告のように、出した翌日に数字が大きく動くものではないので、最初の数か月は、次のような数字で手応えを確かめます。
- 投稿ごとの保存とプロフィールへのアクセスの数(自社の過去の投稿と比べる)
- 出演している社員への質問のコメントやDMの数
- 店頭や問い合わせで「Instagramを見た」と言われた件数
数字の目標と、見直す時期の決め方は、次の記事で解説しています。
社員のメンタルケアと社内理解の促進
顔や名前を出す社員には、コメントへの対応や「どう見られているか」の負担がかかります。担当者を1人にしない仕組みを、始める前に用意します。
- 不適切な言葉を含むコメントを自動で非表示にする設定を使い、出演する社員が荒れたコメントを直接受け止めずにすむようにする
- 返信の担当を2人以上にし、出演する社員と返信する人を分ける
- 返信の範囲・口調・期限を決め、迷うコメントは上の連絡の順番に回す
- 月に1回、運用の目的と数字を社内で共有し、「仕事として発信している」ことを周りに伝える
社内に目的が共有されていると、出演する社員が周りの目を気にせずに発信を続けられます。
よくある質問
- 社員が自社の商品を紹介する投稿に、「PR」などの表示は必要ですか?
-
販売や開発に関わる社員が、商品の認知を広げるために投稿するなら必要です。消費者庁のQ&Aでは、こうした投稿は「事業者の表示」になりうるとし、「広告」などと分かりやすく書かないと告示に違反するとしています。社員が感想を投稿しただけで、ただちに違反になるわけではありません。
- 自己紹介に「〇〇社の社員です」と書けば十分ですか?
-
十分とは限りません。消費者庁のQ&Aでは、所属を書くだけでは、事業者の表示だと明瞭になっているとは必ずしもいえないとしています。自社の商品を紹介する投稿では、本文に「PR」「広告」などを書きます。
- 社員が退職したら、出演していた投稿はどうすればよいですか?
-
出演の前に本人と書面で決めた扱いに沿って対応します。決めていない場合は、本人に意向を確かめてから、残すか削除するかを決めます。退職した社員から削除を求められることもあるため、出演の範囲・期間・退職後の扱いは始める前に決めておきます。
- 担当者が異動するときは、何を引き継げばよいですか?
-
ログイン情報、2段階認証の端末、運用マニュアル、素材、外部ツールの権限です。引き継いだらパスワードを設定し直し、前の担当者の個人の端末からはログアウトします。
- 社員が主役のアカウントは、どのくらいで成果が出ますか?
-
決まった期間の目安はありません。最初の数か月は、投稿ごとの保存やプロフィールへのアクセス、出演する社員への質問の数を、自社の過去の投稿と比べて手応えを確かめます。
まとめ
社員が主役のInstagram運用は、働く人の目線で、使い方や現場の知識を伝えられる運用です。主なメリットは次の3つでした。
- 信頼性の高い情報を発信できる
- ファンがつきやすい
- 商品の良さを、使う人の言葉で伝えられる
そのうえで、始める前に決めておくルールは3つです。
- 広告の表示:会社名と役割を名前の欄か自己紹介に書き、自社の商品を紹介する投稿は本文に「PR」などを書く
- 引き継ぎ:ログイン情報を会社で管理し、担当が替わったらパスワードを設定し直す
- 顔や名前を出す取り決め:出演の範囲・期間・退職後の扱いを、本人と書面で決める
まずは、出演してもらう社員と一緒に、上の3つを1枚の紙にまとめるところから始めてください。
社員が出る運用のルールづくりで迷ったときは、株式会社ハッシュタグでもご相談を受け付けています。
参考にした情報(2026年10月18日に確認。公式=消費者庁などの公的機関の情報、報道=ニュースサイトの記事、解説記事=SNS運用の会社や人事の専門サイトの記事、企業の実例=公式アカウントの表示)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関するQ&A」(Q3・Q12・Q14)(公式)
- 消費者庁「ステルスマーケティングに関する景品表示法の規制」(公式)
- 富山県警察(SNSアカウントの管理・パスワードの再設定)(公式)
- 弁護士ドットコムニュース(2024年7月14日、退職した社員の動画の削除)(報道)
- 日本の人事部 Q&A(退職後の写真の使用と本人の同意)(解説記事)
- TaTap(SNS担当者が辞めるときの引き継ぎ)(解説記事)
- コムニコ(2026年8月、SNSの炎上対策・ガイドラインの項目)(解説記事)
- 3COINSの本部スタッフのInstagramアカウント(企業の実例)
- 資生堂ジャパンの美容部員のInstagramアカウント(企業の実例)








